関心と議論が拡がれば幸いです。

健康・省エネ住宅を推進する議員連盟 
会長 高村正彦 殿

一般社団法人健康・省エネ住宅を推進する国民会議

提言
「世界一の健康・快適・省エネルギー住文化を目指す」
~未来の子どもたちに負の遺産を残さない~

骨子
「我が国は平成18年に定めた住生活基本法により、住宅の安全性や快適性の向上に努めてきたところであるが、昨今の調査や研究により、住宅における冬季の低室温が居住者とりわけ高齢者にもたらす健康面その他社会的な損失が大きいことが明らかになりつつある。先進国との比較においても、我が国における冬季の住環境は低い水準と言わざるを得ず、これから超高齢化社会を迎える我が国にとって重要な課題となっている。そのような状況を鑑み、健康・省エネ住宅を推進する国民会議は次の提言を行う。

① 住宅内での目指すべき室温基準を設定する。

② 住宅の省エネルギー基準における断熱等性能の基準の適合義務化と誘導する断熱等性能の水準を世界一と言える水準に設定する。

これらの施策により、我が国が世界一の健康・快適・省エネルギーな住文化を実現し、ひいては我が国の発展と繁栄に寄与することを切に願う。」

※1 関連憲法
「第二十五条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」

※2 住生活基本法
「第一章 総則(目的)第一条 この法律は、住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策について、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体並びに住宅関連事業者の責務を明らかにするとともに、基本理念の実現を図るための基本的施策、住生活基本計画その他の基本となる事項を定めることにより、住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の安定向上と社会福祉の増進を図るとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」
「第二章 基本的施策(住宅の品質又は性能の維持及び向上並びに住宅の管理の合理化又は適正化)第十一条  国及び地方公共団体は、国民の住生活を取り巻く環境の変化に対応した良質な住宅の供給等が図られるよう、住宅の地震に対する安全性の向上を目的とした改築の促進、住宅に係るエネルギーの使用の合理化の促進、住宅の管理に関する知識の普及及び情報の提供その他住宅の安全性、耐久性、快適性、エネルギーの使用の効率性その他の品質又は性能の維持及び向上並びに住宅の管理の合理化又は適正化のために必要な施策を講ずるものとする。

参考資料

A.提言骨子の補足説明

① 住宅内での最低室温基準の設定
・国交省のスマートウェルネス住宅等推進モデル事業等(平成26~28年)や医学的学術研究により得られた知見により住宅内の最低室温の基準(又はガイドライン)を定め国民に啓発することが必要である。

・ビル等での建築物においては、厚生労働省「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」の建築物環境衛生管理基準により、衛生環境面から室温基準が「17〜28度」と定められており、その結果室温は適正に保たれている。

・一方で、住宅においてはそのような定義もなく関連法や施策が無い状況であり、冬季の住宅は寒いのは仕方が無いという我慢の住文化が、国民の健康面だけでなく社会的な損失をもたらしている。住宅においても同様に最低室温の基準(またはガイドライン)を設けることを提言する。

※現在行われているスマートウェルネス住宅等推進モデル事業は平成26年度より3年間の予定であるが健康調査によるエビデンスを得るには長期間を要すので事業の延長を提言するとともに、より高性能な断熱改修が促進されるよう補助対象工事要件の見直しをお願いしたい。また国民への啓発を効率的に進める為のモデル住宅の建設や、国民から信頼される人材の育成に関する事業などに支援をお願いしたい。

② 新築住宅の省エネルギー基準における断熱等性能の基準の適合義務化と誘導する断熱等性能の水準を世界一と言える水準に設定

・社会資本整備審議会が平成27年1月に報告した第一次答申「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方について」では、大規模非住宅建築物から順に住宅に至るまで省エネルギー基準の義務化を進めるものとしているが、大規模非住宅建築物の義務化は一次エネルギー消費量のみを基準化することとなっており、断熱等性能(外皮性能)の基準については義務化しない方向とされている。これは同法が省エネルギーを主たる目的として検討されていることから、断熱等性能の如何に関わらず省エネルギー性が一定水準をクリアすれば良いとの考え方に立脚している。

・一方、住宅における義務化の内容は、同審議会において、これからその詳細が検討されることとなるが、一部に大規模非住宅建築物と同様に、住宅においても断熱性能(外皮性能)の基準については義務化する必要は無いという意見もある。しかしながら、断熱等性能(外皮性能)の向上は省エネルギー化の観点だけではなく、国民の健康・福祉、医療費の削減、介護に関わる家族の負担軽減など超高齢化社会を迎える我が国にとって大きな便益が見込まれることから、断熱等性能(外皮性能)についても義務化することを提言する。合わせて、国民が住宅を新築、改修、売買、賃貸する際に、その住宅の断熱等性能(外皮性能)及び1次エネルギー消費量の水準を容易に比較・検討できるような社会制度として、住宅のエネルギー性能表示制度を義務化する事を付帯して提言する。

・暖房と断熱の優先順位
温暖地における住宅が無断熱ないし低断熱であっても相応に暖房すれば室内は快適に保たれるがエネルギー使用量が増大することになることから暖房による暖かさを前提とする施策は省エネルギーという観点から望ましいとは言えない。

・新築住宅の断熱等性能(外皮性能)の基準の2020年以降の段階的強化とその暫定ロードマップの明示
近年において住宅の長寿命化にかかる建築技術が進展し、住宅の平均寿命は過去の30年程度から推定50年~100年と伸長していることから、今後において新築時に低い断熱性での建築をしてしまうと孫子の代まで負の遺産を継承することになることが危惧されている。現在、社会資本整備審議会で検討されている住宅の省エネルギー基準の義務化は2020年を目標としているが、前項において断熱等性能(外皮性能)の基準の義務化の必要性について述べたとおり、建築物が長期的に利用されるという観点から断熱等性能(外皮性能)の基準の義務化は2020年目標のみならず、2020年以降において2030年、2040年、2050年までの暫定長期目標をロードマップとしてかつ世界一の水準にて明示することを提言する。

・既存住宅について
既存住宅の省エネルギー化・断熱等性能の向上は、新築時よりも相対的に経済的な負担が大きくなることから、より一層の経済的な支援と長期的な観点からの施策検討が必要である。

B.我が国における現状と施策

(ア) エネルギー基本計画
平成26年4月に閣議決定したエネルギー基本計画により住宅分野の省エネルギー化施策として、2020年に省エネルギー基準の適合義務化、また2030年までに新築住宅の平均でZEH(ネットゼロエネルギーハウス)の実現を目指すとされているが、2020年に義務化が予定されるの省エネルギー基準の断熱性能の水準は平成11年に次世代省エネルギー基準として定められたものと同水準であり、16年も前の知見に基づくもので、先進国の中では最低レベルである。また2030年より先の省エネルギー性能の水準についての目標は示されていない。

(イ) 「今後の住宅建築物の省エネルギー対策のあり方について」(社会資本整備審議会)
平成27年1月に第一次答申が公表されたところである。本答申は、建築物における省エネルギー化に向けた規制的措置や誘導的措置などを推進していく上での方向性を整理するものである。その誘導的措置において、断熱等性能(外皮性能)の確保が健康・快適性の面で優れていることや、健康維持・増進に関心の高い主体やそのような主体が利用する施設における断熱改修等の取組みを推進する、と報告されているが、住宅の断熱等性能の規制(義務化)のあり方については明記されていない。(資料別添:http://www.mlit.go.jp/common/001067280.pdf)

(ウ) スマートウェルネス住宅の普及
国交省のスマートウェルネス住宅等推進モデル事業により、住宅の高断熱化が健康の維持・増進並びに快適性の向上につながり、居住者や社会全体のベネフィットが大きいことの実証調査が進んでいる。前述の答申においても「スマートウェルネス住宅の推進・・・住宅の断熱化に伴う健康維持・増進効果の検証結果の情報発信等を通じ、健康維持・増進に関心の高い主体やそのような主体が利用する施設における断熱改修等の取組みを推進する。」と明記されている。

(エ) ヒートショック
一年間で1万7千人(交通事故の3倍)とも言われる住宅内での循環器系疾患等による死亡事故は他の先進国と比較しても高い水準で、ヒートショックという住宅の断熱等の性能が低く冬季に住宅内が低室温になることが主たる要因と言われている。これらのことは一般新聞等(日経新聞H27.1.6号)でも報道され、国民の知見として定着しつつある。

(オ) 医療費削減等の経済効果(NEBノンエナジーベネフィット)
死亡だけでなく重度障害に至る疾患を考慮すると医療費の増大や介護する家族の負担など大きな社会的課題と言える。ヒートショックはとりわけ高齢者への影響が大きいが、この解決は健康寿命の延伸や医療費の削減につながり、有識者によれば年間一世帯あたりおよそ3万円のベネフィットになるという試算がある。

(カ) 北海道とその他地域の比較
我が国において住宅の高断熱化が最も進んでいる地域は北海道であり、北海道では日本において最も寒冷な地域であるにも関わらず住宅内の室温は相応に温暖に保たれていることから、住宅内での死亡率は冬季において温暖地では上昇傾向を見せるが、北海道では上昇傾向を見せないことが有識者による調査にて明らかになっている。

(キ) 技術革新
現在、サッシや断熱材等の技術革新は目覚ましく、さらなる高断熱化への移行は決して困難なものではない。(参考:温暖地において、平成11年基準(Q値2.7)→トップランナー基準(Q値1.9)で坪1万円程度であり標準的な住宅で約40万円と推定される。)

C.海外の動向

(ア) 英国の動向
英国保健省では住宅室内の最低温度を18度と推奨するなどガイドラインを設けているが、我が国においてはそのようなガイドラインは示されていない。

(イ)ドイツの動向
ドイツは低炭素化施策の積極的な推進で知られるが、住宅・建築物の断熱改修を国の施策として徹底的に推進し、省エネルギーと住環境の向上を両立し実現している。ドイツと日本では気候風土が異なるとの意見もあるが、ドイツの月別平均気温は概ね日本の東北地方と同等であり、東北地方で義務化予定の断熱基準とドイツの義務化済みの断熱基準を比較すると、ドイツの方がおよそ2倍(暖冷房負荷が1/2)という性能差があり、日本における住宅の断熱水準の施策が国際的には低く、そのことがとりわけ冬季における住環境が低水準で留まることにつながっている。

(ウ)エネルギーパス制度
ドイツなどEU各国ではエネルギーパスという住宅のエネルギー性能表示制度が既に普及している。10年以上遅れて、日本でも類似の制度が平成27年4月からスタートする。多くのEU各国において住宅の新築時、改修時、賃貸時にエネルギー性能表示を告知することが義務化されていて、省エネルギー化された住宅に対する税制優遇や金利優遇など社会制度として様々なインセンティブが与えられ、結果として高断熱住宅の普及が目覚ましい。

(エ)家庭のエネルギー消費量の国際比較
家庭におけるエネルギー消費量を欧米と日本で比較すると、日本の方が少ないので日本が省エネルギー先進国ということが一般に言われているが、その差は暖房エネルギーの差によるところが大きい。日本特有の部分間欠暖房という冬季の寒さを我慢する住文化に起因するとも言える。欧米は部分間欠暖房ではなく、全館連続暖房が一般的である。日本の家庭のエネルギー消費量が先進国との比較において少ないので日本の断熱等性能や省エネルギー性能の基準をより一層に高めて行く必要が無いという意見があるが、国民の健康・福祉の増進という観点から考慮すると、断熱等性能については先進国と比較して著しく低い水準であるので早期に追いつきさらには世界一の水準を目指すべきである。

以上












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://ecoworks.blog60.fc2.com/tb.php/1418-bee3d245